Classiques japonais avec furigana
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けいたいについて
形態について
豊島 与志雄
Lisez 形態について (けいたいについて) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 707 caractères · 6 écrans
だから、例えば、小説を書く場合にも、作者は文字によって或る人間像を描き彫むのであって、紙上に書く一字一行は、点であり線であり、色彩の一刷毛であり、鑿の一打である。少くとも真に創作の境地にはいった作者にとってはそうである。――そうではあるが、然し文学者にとって形態を捉えることが如何に困難なことであるか。
「……私の主な才能は、感情についての想像力であった。形態を喚起する能力を僅かしか具えていない私は、一の場所、一の光景、一の立像を、正確に思い出すのは容易でない。ただ二三回しか逢ったことのない人物の、眼や髪の色を云うことは、なかなか出来難い。その代りに、情緒の方は、ごく軽微なものも私の記憶の中に強く残っていて……それを再び感じ味うことが出来る。」――これはブールジェーの告白であり、心理解剖を主とする作家としては当然のことかも知れないが、然し、如何なる作家も、これに似た歎声を発しないものが果してあろうか。観察眼の特殊な修練と緊張とがない限り、人は形態に対しては案外無頓着なように思われる。これについては、夢を顧みれば分る。頭の中に最もはっきりしてるのは、種々の感情や感覚であって、最もぼやけてるのは物の形態である。