Classiques japonais avec furigana
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ひがんすぎまで
彼岸過迄
Lisez 彼岸過迄 (ひがんすぎまで) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 195 333 caractères · 385 écrans
僕はその時市蔵の事を思い出して、こういう苦い真理を承わらなければならない我々日本人も随分気の毒なものだが、彼のようにたった一人の秘密を、攫もうとしては恐れ、恐れてはまた攫もうとする青年は一層見惨に違あるまいと考えながら、腹の中で暗に同情の涙を彼のために濺いだ。
これは単に僕の一族内の事で、君とは全く利害の交渉を有たない話だから、君が市蔵のためにせっかく心配してくれた親切に対する前からの行がかりさえなければ、打ち明けないはずだったが、実を云うと、市蔵の太陽は彼の生れた日からすでに曇っているのである。
僕は誰にでも明言して憚からない通り、いっさいの秘密はそれを開放した時始めて自然に復る落着を見る事ができるという主義を抱いているので、穏便とか現状維持とかいう言葉には一般の人ほど重きを置いていない。したがって今日までに自分から進んで、市蔵の運命を生れた当時に溯って、逆に照らしてやらなかったのは僕としてはむしろ不思議な手落と云ってもいいくらいである。今考えて見ると、僕が市蔵に呪われる間際まで、なぜこの事件を秘密にしていたものか、その意味がほとんど分らない。