Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

わすれのこりのき

忘れ残りの記

吉川 英治

Lisez 忘れ残りの記 (わすれのこりのき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 193 050 caractères · 383 écrans

Aozora Bunko

暇を出されたという事はやはり大きな衝動だった。そのくせ「家へ帰れる――」といううれしさが、こんこんとこの幾日か渇いていた心の何かを満たしてもいた。

けれど、母の手紙で、家はもう元の清水町赤門前を引払ってしまい、西戸部蓮池何番地という所へ移っている事だけを知っていて、以来まだ一度もその後のわが家は見ていないのであった。

いつか店の使いで、戸部銀行へ納品に行ったとき、ふとわが家の引っ越し先を探しにうろついた事もあったが、家を出るさい父から「奉公に出たら、どこまでも忠実に勤めなければいけない。使い先から家へ寄ったりしても決して家へ上げてはならないぞ」と、母も云われ、ぼくも云われていた事なので、父の顔恐さに、思い止まって、途中から空しく帰ってしまったのである。

だからまず第一に、暇を出されて帰ったら、父がどんなに怒るかという事のみが何より心配だった。密かなうれしさの半面に、また小さい胸を傷めながら戸部の引っ越し先を探し歩いた。

字蓮池という所は、伊勢山から紅葉坂の反対側の方を西へだらだら降りて行って、中途から狭い横道をまた右へ降りきった一劃の窪地であった。