Classiques japonais avec furigana
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あいのごとく
愛のごとく
山川 方夫
Lisez 愛のごとく (あいのごとく) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 103 908 caractères · 210 écrans
愛のごとく
私はいつも自分にだけ関心をもって生きてきたのだ。自分にとって、その他に確実なものがなにもなかったので、それを自分なりの正義だと思っていた。私はいつも自分を規定し、説明し、自分の不可解さを追いかけ、自分をあざけり軽蔑してくすくす笑いながら、でも仕方なく諦めたみたいに、その自分自身とだけつきあってきたのだった。自分とだけつきあう。それが可能か不可能か、それは別のことだ。ただ私はそうしたいと思っていた。そのせいかどうかはしらない。私にはいつも自分はもっとも嫌いな他人だった。私は自分が誰も愛せないのを確信していたのだ。
毎週一度、私は下宿へ――三畳の私だけの部屋へ行った。金曜から日曜の夜まで。家族たちとの同居の生活では、起きてから睡るまで、ときには睡っている最中さえ、私は一人きりにはなれなかった。胆嚢炎のため商売をやめ、まだ寝たり起きたりの母と、三十三歳の未婚の姉、二十五歳の妹。私はいつも誰かのグチを聞かなければならない。その家は建坪こそかなりあったが部屋数が少く、私の逃げこめる部屋もなかった。
病気がぐずつきつづけているせいか、そのころの母は私たちの顔を見ればグチをこぼし、きりもなくグチをこぼしては怒りはじめた。