Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

あいのごとく

愛のごとく

山川 方夫

Lisez 愛のごとく (あいのごとく) de 山川 方夫 (やまかわまさお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 103 908 caractères · 210 écrans

Aozora Bunko

前髪だけを出した白い布を耳のうしろで結んでいる。その白い頭をそらせ娘は笑い出した。「ほんとう。傑作だね」

「親父だって、金に困ってるもの」

「うん……」娘は、ふいに笑いやめた。ひくい老けた声でいった。「そいで、あんたんとこも、なかなかたいへんなんだろうね」信二はコップに口をつけた。

コップは便所に着く前に空になった。娘が用を足すのを待ち、信二は衛門をながめていた。夜は親しかった。女とつれだった兵士が幾組も門を出て行く。伍長と「黒い女」はみえなかった。やっぱり、帰ってしまったのだろうか。彼はコップを指でくるくるとまわしながら、便所の裏を歩いた。独立した建物になっているその裏の粗い砂利の暗がりで、ときに接吻をしている男女を見ることがあったからだ。だが、そこにも人のいる気配はなかった。

奇妙な物音がきこえたのはその直後だった。鋭い唸りのような音はすぐに途切れ、信二はなにかわからなかった。つづいて、こんどはあきらかな悲鳴が空気を裂いてきこえた。信二は便所に走りこんだ。

「やだよう」と、泣き出すような太い声が叫んで、信二はわざと大きな跫音をたててその扉をひらいた。