Classiques japonais avec furigana
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くろかべ
文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁 (くろかべ) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 72 070 caractères · 143 écrans
小学最初級の友だちの、――現今は貴族院議員なり人の知った商豪だが――邸が侍町にあって、背戸の蓮池で飯粒で蛙を釣る、釣れるとも、目をぱちぱちとやって、腹をぶくぶくと膨ます、と云うのを聞くと、氏神の境内まで飛ばないと、蜻蛉さえ易くは見られない、雪国の城下でもせせこましい町家に育ったものは、瑠璃の丁斑魚、珊瑚の鯉、五色の鮒が泳ぐとも聞かないのに、池を蓬莱の嶋に望んで、青蛙を釣る友だちは、宝貝のかくれ蓑を着て、白銀の糸を操るかと思った。
学問半端にして、親がなくなって、東京から一度田舎へ返って、朝夕のたつきにも途方に暮れた事がある。
「ああ、よく鳴いてるなあ。」――
城下優しい大川の土手の……松に添う片側町の裏へ入ると廃敗した潰れ屋のあとが町中に、棄苗の水田になった、その田の名には称えないが、其処をこだまの小路という、小玉というのの家跡か、白昼も寂然としていて訝をするか、濁って呼ぶから女の名ではあるまいが、おなじ名のきれいな、あわれな婦がここで自殺をしたと伝えて、のちのちの今も尚お、その手提灯が闇夜に往来をするといった、螢がまた、ここに不思議に夥多しい。
が、提灯の風説に消されて見る人の影も映さぬ。