Classiques japonais avec furigana
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いととりぬま
文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会
長谷川 時雨
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 百物語怪談会 (いととりぬま) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 2 080 caractères · 5 écrans
糸繰沼
湖、青森あたりだとききました、越中から出る薬売りが、蓴菜が一ぱい浮いて、まっ蒼に水銹の深い湖のほとりで午寐をしていると、急に水の中へ沈んでゆくような心地がしだしたので、変だと思っていると、何処でか幽かに糸車を廻す音がきこえたともうします。おやと気をつけると、暗いところがほんのり明るくなって、自分は沈みもしなければ浮上りもしないで、水の中にふっと止まっている。向うを見ると、薄っすらと人陰が見えて、糸を繰る音がする。心を定めてよく見直すと、品の好い老女で、糸を繰る手はやめなかったが、振返って薬売りを流し眼に見て「返してやるのではないが、お前に言便次をしてもらいたいから、助けてあげる。」と言って「奥州閉伊郡の中妻の里というところに、こういう家があるからその家へ行って、おばあさんは此処にこうやっていると伝えてくれ。」と頼まれたかと思うと、おばあさんの姿も、糸車の音も消えて、薬売りは人の助けに生返ったのでした。無言っていろと口をかためられたのですから、薬売りは一人で気味悪るがりながら、その家が誠にはないようと祈ったり、そんな馬鹿馬鹿しいことがありようはないと思ったりして、それでも「池の主になっているから、姿をかくしたが安心してくれ。