Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 190 406 caractères · 381 écrans
「さらば、清洲へ」
と、ふたたび急いだ。
着ている武具は重かったし、体は綿のようにつかれていたが、騎にまかせて月の道を帰る彼の気もちは、もう浴衣がけの人のように気軽く見えた。
清洲の城下は、熱田の町以上にたいへんな騒ぎであった。千戸に万燈をかけ連ねていた。辻には大篝を焚き、家ごとの軒下には、老人も子も若い娘も皆出て、凱旋将士を見ると、
「帰りませ!」
「帰りませ!」
と、熱狂した。
辻にも、黒い人の山が押し合っていた。粛々と、城門へ練ってゆく鉄甲の列のなかに、わが良人やあるとさがし廻る眼。わが子ありと、人へさけぶ老人。恋人の影を求める若い女。しかし、そのすべてが、やがて馬上の信長を夜空に見るや、
「オオ。オオ」
「国主」
「わが国主」
「信長様」
一瞬は、歓呼とどよめきの坩堝であった。彼らにとって、信長こそ、わが子以上のものであり、わが良人以上のものであり、恋人以上の恋人であった。
「――今川治部大輔が首見よや。信長がきょうのみやげはこれぞ。あすからは、そち達にも、国境の憂いはないぞよ。精出して働けよ。働いてよう遊べよ」
馬上、庶民たちの歓呼へ、信長は、右へ向いては云い、左の群集へ向ってはまた答えて行った。