Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 180 256 caractères · 361 écrans
夏だし、道は嶮岨だし、具足着ではあるし、追う方も追うほうだったが、逃げまわる天蔵の同勢も、逃げつかれて来たものとみえ、道々、荷を捨て、馬を捨て、だんだん身軽になって百月川の谿谷で、空腹へ川の水を入れ、ぐったり一汗ふいていた。
――ところへ。
わっと、小六の人数が、両側からなだれ落しに、挟撃した。
人間のかかる前に、無数の岩石が降って行った。谷川はもう血の脂を流していた。
「うぬッ」
「おのれッ」
「退くな」
「何の!」
突く。
斬りなぐる。
取っ組む。――川へ墜ちる。
同じ一族と一族との撃突であった。敵の手下と、小六の手兵のうちには、血のつながる叔父と甥、従兄弟と従兄弟、日頃は仲のよい友達の顔もあった。
が――ぜひもない!
同じ五体の者なればこそ、その病根は断たなければならないのだ。小六は、わが血にひとしい敵の鮮血をかぶりながら、
「天蔵ッ。天蔵ッ出合え」
と喚きながら、誰よりも勇壮に駈けまわった。
百月川の谿谷は、一瞬でまっ赤になった。
小六の手兵も、十人ほど死んだが、敵はほとんどみなごろしにした。
しかし、小六はなお、
「あの峰。あの道を」
と、血眼だった。