Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 180 256 caractères · 361 écrans
畑から飛んで来た子ども達は、軍馬を追い越して堤へ駈けあがった。
日吉も、於福も、仁王も、ほかの洟っ垂らしも、眼をかがやかして、そこらの野薔薇や菫や雑草の花をむしり取って、両手につかみ、眼の前を勇しい武将や兵が通るたびに、
「八幡。八幡」
「勝ちいくさ」
「華武者祝え。華武者祝え」
ふしをつけて叫びながら、手の花を、声と共に抛り合った。
村でも、街道でも、領土の子ども達は、兵馬を見るとこう躁いで祝福した。――けれど馬上の将も、足を引き摺って行く兵隊も、みな仮面のような強い顔を黙々と持って、
(寄るな……)
とも叱らない代りに、彼らの歓呼に、ニコと一笑を酬いてもくれなかった。
殊に今通るこの一隊は、三河方面から引き揚げて来た軍の一部らしく、前線でさんざんに戦い抜いて来たものとみえ、馬も人も疲れぬいていた。
馬の中には、腹を突かれて、腸をぶら下げている馬もいた。兵の中には、満身血になって、戦友の肩にすがってやっと歩いて行くような兵もいた。
槍の柄にも、具足にも、干乾びた血は、漆みたいに黒く光っている。――そして、どの顔もどの顔も、汗と埃にまみれ、ただぎらぎらした眼のみが続いて行った。