Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 180 256 caractères · 361 écrans
河原の石は乾いてくる。
草の実や、露によごれている日吉の着物にも、やがて、陽がかんかんと照りつけてきた。
「ここらにいてみようか」
漫然と、独り云って、日吉は河原の畔の草むらに、坐りこんだ。
信長公、信長公。
織田の腕白どの。三郎信長公とは、いったいどんなお方か。
――この日頃。
日吉の頭には、寝ても起きても、その人の名が、護符のように貼りついて、離れなかった。
「いちど見たい」
彼の念願だった。
それを今日、果そうとして、早くからこの河原へ来て見たのだった。
亡き織田備後守の跡目を継がれたはよいが、あのわがままで粗暴な大うつけでは、とても、備後守信秀の跡は持ちこたえてゆかれまい。
とは、一般な世評であった。
粗野で――癇持ちな――
たわけ者びた若殿。
行く末の案じられる跡継よ。
と、信長の名が出れば、必ずそこでは、そんな陰口を聞いたものである。
日吉も、幾年のあいだ、巷のうわさを信じ、貧しい国土と、不幸な国主を持った郷土に、悲しみを抱いていたが、諸国の実情を見て来て、
(いや、底の底は、分らないぞ。――合戦のある日ばかりが、戦争ではないから)
と考えられて来たのだった。