Classiques japonais avec furigana
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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 180 256 caractères · 361 écrans
寺入りの時は、直に寺へ連れて行かれたので、ここへは立ち寄らなかった。また、近くに親類があると知ると、辛抱がし難くなるであろうとおえつが嫁いで来ていることも、彼の耳へは聞かせてなかった。
「小僧。晩の飯は喰べたか」
やがて、弾正が前へ来て坐りながら、にやにやいう。
「喰べた」
かぶりを振ると、
「菓子を喰え」
と、甘い物をたんとくれた。
日吉は、ボリボリそれを喰べながら、長押の槍を仰いだり、具足櫃の紋を眺めたり――それから眼のまえに坐っている加藤弾正の顔を、穴のあくほど、じろじろ見つめたりした。
(この息子、すこし足らないのかな?)
弾正は疑った。なぜならば、余りに自分を見るので、試みに、彼も目をこらして、睨め返したところが、日吉の目は、横に反らしもしなければ、俯向きもしないのである。――といって、まったくの白痴ほど無反射でもないが、ただにやにやと愛嬌をたたえているからであった。
「はははは」
彼の方が、先に目を反らしてしまいながら、
「いつの間にか、大きくなったなあ。日吉、わしの顔を覚えているか」
そういわれて、日吉はかすかに思い出した顔つきだった。――これは七歳の頃、河原で頭を撫でてくれた小父さんなのだ。