Classiques japonais avec furigana
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きゅうぶんにほんばし
旧聞日本橋
長谷川 時雨
Lisez 旧聞日本橋 (きゅうぶんにほんばし) de 長谷川 時雨 (はせがわしぐれ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 045 caractères · 322 écrans
旧聞日本橋
極く早いお茶の水の卒業生だった彼女が学校を出て、大丸横町の岡田学校というのへ月俸金四円也で奉職したのは、私なぞの知らないころだったが、わからずやの私の母は、妹が毎日袴をはいて大門通りを通り、近所の小学校へつとめに来られては肩味がせまいという理由のもとに抗議をもうしこんだ。そのためにあんなおじさんのところへお嫁入りをさせられたのだと、明治十何年か時代のモダン女性は、平凡に――あんまり平凡になりすぎた運命をよく嘆いていた。
ある日坂本に昼火事があって、藤木さんは義妹の一人子を肩にして見物していたが、火勢が盛んなので義妹にも見せたくなって呼びにかえった。自分の見世物のように、勢いよく燃えあがっている火事を眺めさせていると、根岸の方に飛火があると騒ぎだした。とって返して見ると見当がわるい、自分たちの方角だ。おやおやと駈けつけて見ると、住居の茅屋根が燃て、近所の人たちが消ていてくれた。
飛火は消えた。どうやら半焼――それも戸棚の中だけですんだというので、狂気のように家の中にはいって見ると、戸棚の中味だけがすっかり焼けつくして――やっと、どうにかなりかけた藤木の品ばかりでなく、田舎からはこんで来た義妹の家財は一物も満足なのはなく、一緒にして鞄へ入れておいてもらった両家の家禄奉還金の書類も灰になってしまっていた。