Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans
「もうそこです」
突然きっとしたように高城が言った。宇治は立ち止るとうなだれていた首を上げた。灌木と草におおわれたなだらかな丘陵があり、道はそれに沿って曲るらしかった。
「それを曲ると部落があります。花田軍医殿は昨日そこに居られました」
口の中が変に乾いて行くような感じで、その癖不快な生唾がしきりに出た。何も硬くなることはないと思ったが、肉体の方でそれを裏切った。現実に花田と逢うということ、これが夢の中の出来事のようにはっきりしなかった。それでも胸がどきどきと動悸を高めて来た。
――司令部の処から、もう三粁も来たのか?
随分長かったような気がするし、また直ぐだったような気もする。下り坂で幾分楽だったとは言え、宇治は薄い肩を前方に曲げるようにして歩かねばならなかった。丁度カガヤン渓谷を上る時の行軍のように、肉体の限度を越えた疲れが鈍く背筋を押していて、額から冷たい汗が絶えず滲み出た。何のために歩くのか。宇治は蔓草を引きちぎる高城の靴音を聞きながら唇を噛んであるいた。肋骨の間がずきずきと疼いた。
草山の裾を廻ると、貧弱なニッパ屋根が四五軒宇治の視野に入って来た。