Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lisez 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) de 梅崎 春生 (うめざきはるお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 169 810 caractères · 345 écrans

Aozora Bunko

よろしいと言う代りに、隊長は彼の方を見ないまま右掌をあげて僅か振った。敬礼をし、扉を押し、彼は一歩一歩階段を降りた。降りながらためらうように振り返ったが、扉のあおりから部屋の床に火影がちらと揺れただけで、後の長靴は階段に軋みを残しながら既に濡れた地面を踏んでいた。

地面には梢の網目をのがれた光線が散乱しながら落ちていた。密林の彼方で、太陽がすでに登り始めたのであろう。樹々は新芽を立てながら同時に古びた葉を梢から散らしていた。雨季と乾季とより外、季節と言うものを知らぬ此の風土では、植物の営みも自ずと無表情になるものらしかった。樹はおおむね闊葉樹である。径を曲るにつれて、遥か山の下手の方から幽かに歌声が聞えたり、また急に聞えなくなったりした。厚い落葉の層を踏みながら、彼は沈欝に瞳を定め、自分の小屋へ径をたどった。歌は女声である。その単調な哀愁を帯びた旋律は、執拗に樹々の幹を縫い、位置によっては言葉尻まで判るほど明瞭に耳朶に響いて来るのだ。密林の持つ不思議な性格のひとつである。一つの歌声が先行すると、雑然たる合唱が乱れながらそれを追った。あれはイロカノ族の女達の籾搗きの歌声である。