Classiques japonais avec furigana
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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
くすのきのはなし
楠の話
豊島 与志雄
Lisez 楠の話 (くすのきのはなし) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 820 caractères · 22 écrans
父も何か答えた。すると男は立ったまま、仲間の者等に何か云った。そして一人の若い男が立ち上って、父の方へ一寸頭を下げ、大急ぎに其処を離れて門の方へ出て行った。外の者は皆、煙草入れを腰から取って煙草を吸い初めた。
其時父は初めて楠の幹から離れ、村人の方へ向いた。父の姿は急に病気らしい弱々しさに返った。村人は父を真中にして何やら小声に囁き交わしているらしかった。
それから暫くそのままの光景が続いた。私は初めてほっと吐息をつくと、身体がしっとり汗ばんでいるのに気付いた。初夏の太陽が私の頭から背中をじかに輝らしていた。そして私はその楓の後ろから出るか、声を立てるかしたくなった。然し私は父を恐れた。もし私が其処に忍んでいることを父に見付かったら、何かひどいことが起りそうな気がした。
私はじっと我慢した。そしていつのまにか其処に屈んでしまって、楓の根元の草をしきりにむしり取っていた。どの位時間がたったか私は知らない。大変長いようであるし、また僅かな間のようでもあった。
背広に中折を被った男が一人、自転車で私の家に走り込んで来た。彼は自転車を中門の所に置いて、真直に父の所へやって行った。