Classiques japonais avec furigana
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もみノきはのこった
樅ノ木は残った
山本 周五郎
Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 148 519 caractères · 296 écrans
と老女の藤井が叫んだ。そして綱宗を追って来て、その腕にすがりついた。綱宗はふり放した。
「甲斐、動くな」
「殿さま」藤井が再びとりすがった。
綱宗は激しく突きとばした。藤井はよろめいて膝をつきながら、「原田さまお逃げ下さい」と悲鳴をあげた。
はつ女は泣いていた。上段の自分の席に坐ったまま、彼女が両手で顔を掩っているのを、甲斐は見た。
甲斐が動かないので、綱宗は斬りつけた。もちろん斬るつもりはなかったろう。甲斐は上体を捻って、むぞうさに綱宗の右手をつかんだ。綱宗は身をもがいた。
「おしずまり下さい」と甲斐が云った。
綱宗が叫んだ、「手向いするか」
「おしずまり下さい」
綱宗は「おのれ」と云って足をあげた。蹴ろうとするのを、甲斐は僅かに避け、綱宗の腕を逆にねじあげ、刀を奪い取って、突き放した。
綱宗はうしろへ倒れた。
「藤井どの」と云って、甲斐は刀をさしだした。
老女は両袖を重ねて受取り、すばやく上段のほうへいった。綱宗は尻もちをついたまま、苦しそうに「はっはっ」と喘ぎ、両手を前について、頭を垂れた。
「おれは、まだ、二十一だ」と綱宗は云った、「おれはまだ、二十一だぞ、甲斐、わかるか、おまえにわかるか、世に出たのは僅か二年たらず、この年で、これからさき、ずっと、ひかげの身でくらさなければならない、この気持がわかるか」