Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もみノきはのこった

樅ノ木は残った

山本 周五郎

Lisez 樅ノ木は残った (もみノきはのこった) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 148 519 caractères · 296 écrans

Aozora Bunko

甲斐は黙っていた。

綱宗は顔をあげて甲斐を見た。綱宗の眼は濡れていた。甲斐はじっと、その濡れている綱宗の眼をみつめた。

「ゆるせ、悪かった」と綱宗が云った、「また来てくれるか」

「正月には船岡へ帰ります」

「また来てくれるな」

「御番であがりましたら伺候いたします」

「待っているぞ」綱宗は顔をそむけ、片手をうしろへ伸ばしながら云った、「はつ、手をかせ」

綱宗は、はつ女に支えられて、奥へ去った、数寄屋の中は、すでに暗く、手燭を持った侍女が、二人の先に立ち、老女を残して、他の侍女たちも、うしろを護っていった。

甲斐はそれを見送った。

はつ女に支えられた、綱宗の姿を、手燭の光が、ぼうと、いかにも心もとなくうつし、そして上段の襖のかなたへ、蹌踉と去っていった。甲斐はしんと、それを見送っていた。綱宗の姿が見えなくなると、彼は静かに眼をつむり、ややしばらく、黙って坐っていた。それはあたかも、いまの綱宗の姿を、記憶にきざみつけようとしているかのようにみえた。

ふと啜り泣きの声が起こった。老女の藤井が泣きだしたのであった。彼女は低く、囁くような声で、云った。

「おいたわしいと、お思いになりませんか」