Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
るてん
流転
山下 利三郎
Lisez 流転 (るてん) de 山下 利三郎 (やましたりさぶろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 5 715 caractères · 12 écrans
「蕗子が殺されたのは、その晩の僅かな時間のあいだでした……。
私が訣別の詞を書いた手紙をもって戸外へ出ると、そこは彼女の家の裏まで田圃つづきです。彼女の居間に灯のついていることが、幾度か窓の下へ近よってゆくことを逡巡させましたが、ようやく思切って忍足に障子の際までゆくと、幸いその破れから内部を覗くことができました。
母に死別れて間のない、傷みやすい蕗子の心を波立たせたくない。能ることなら何も知らせずに、このまま土地を離れてしまいたい。この手紙だって、自分が旅立ってしまうまでは、見てくれない方が好いのだと思っていたのですが、都合の好いことには蕗子は他の部屋にでも行っていたのか、その部屋は空っぽだったのです。
分厚い手紙が、指先を放れて、窓障子の間からぱさりと音をたてて落ちました。
私は見咎められないように窓の下を放れて、私の家へ帰りましたが、そのからんとした空家……もうこれでお別れかと思うと、梁にかけられた蜘蛛の巣までに愛着が感じられたのです。気を取直して荷物を携げて停車場までゆきましたが、予定の汽車が出るまでには、まだ二時間近くも余裕があります。