Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
ちじんのあい
痴人の愛
谷崎 潤一郎
Lisez 痴人の愛 (ちじんのあい) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 179 399 caractères · 353 écrans
以前、夫婦でいた時分にはこんな馬鹿なことはなかったんだ、己がこうして寝ている傍に彼女もいたんだ、そう思うと、私は無上に口惜しくてなりませんでした。壁一重の向うでは、ナオミが頻りに、―――或はわざとそうするのか、―――ドタンバタンと、床に地響きをさせながら、布団を敷いたり、枕を出したり、寝支度をしています。あ、今髪を解かしているな、着物を脱いで寝間着に着換えているところだなと、それらの様子が手に取るように分ります。それからぱッと夜具をまくったけはいがして、続いてどしんと、彼女の体が布団の上へ打っ倒れる音が聞えました。
「えらい音をさせるなあ」
と、私は半ば独り言のように、半ば彼女に聞えるように云いました。
「まだ起きているの? 寝られないの?」
と、壁の向うから直ぐとナオミが応じました。
「ああ、なかなか寝られそうもないよ、―――己はいろいろ考え事をしているんだ」
「うふふふ、譲治さんの考え事なら、聞かないでも大概分っているわ」
「だけども、実に妙なもんだよ。現在お前がこの壁の向うに寝ているのに、どうすることも出来ないなんて」
「ちっとも妙なことはないわよ。ずっと昔はそうだったじゃないの、あたしが始めて譲治さんの所へ来た時分は。