Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記
吉川 英治
Lisez 私本太平記 (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 126 598 caractères · 254 écrans
「お。笠売りがおるナ、笠を買おう、これこれ、笠をくれい」
笠売りは、法師と見て、あいそもなかった。
「坊んさん。あいにく、網代笠はないよ」
「それや何ンだ」
「初瀬笠ですわい」
「何笠何笠と、よく土地名をかぶせるが、みな似たような物よ。初瀬笠、かぶろうかい」
「ようございますか」
「ああ、よしよし」
銭を払い、すぐ汗拭きとかぶり代えて、立ち去りかけたが、また何を見たのか、急に戻って、笠売りの隣の木蔭に佇んだ。
巨きな槐の木の下に、むしろを延べ、古机をおいて、傍ら扇を売っている若い夫婦者を見たのである。ちょうど、一人の女客が、小扇を買って、何かそれへ書いてでも欲しいように求めていた。
素扇なので、扇を買う客は例外なく、扇折りの夫婦に、ちょっとした絵やら歌など書いてもらって行った。
が。やはり男の亭主よりは、女房の女筆のほうが、客には人気があるものとみえる。男は黙々と、扇を折っているだけだった。
「これ、扇折り」
やっと客足が絶えたのをみると、旅法師も銭をかぞえて。
「わしにも、そこの扇を一本くれまいか」
「はい。これでございますか」
「いや。そちらの五本骨の方がよいな。