Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

たちがれ

立枯れ

豊島 与志雄

Lisez 立枯れ (たちがれ) de 豊島 与志雄 (とよしまよしお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 613 caractères · 41 écrans

Aozora Bunko

その厚ぼったい肉体が、汗をかき、脂をうかせて、自分の熱気に喘いでるようだった。中江は何んだか息苦しくなるものを感じ、ふみにじられるような自分の心を感じて、彼女の言葉はうわの空できき流し、さっきの自分の気持に対して、ただわけもなく、嘘だ嘘だ、と胸のなかで叫んで、そんなら真実のものは何かと、ぼんやり考えるのだった。そして彼女の髪がぱらぱらと頬にさわると、我に返ったようにそっと身を引いて、窓の硝子からさしこむ明るい午後の光を、眼をしばたたきながら見上げるのだった。

「すこし、散歩なさらない、ねえ、先生……。」

甘えたようなキミ子の言葉に、中江はいっぺんに引きずられて、ふらふらと立上ってしまった。紙入のなかを調べて、十円紙幣が一枚残っているのを確かめたのが、他人事のように感ぜられた。そして外に出ると、キミ子はもう籠から放れた小鳥のようで、フェルト草履の上に軽快に身を踊らし、その後から中江は、まるで盲人のように機械的についていった。

中江の頭にはその印象がはっきりと残っていた。場所はよく分らないが、ごくゆるやかに湾曲してる街路で、そのカーブの内側の歩道を歩いていると、向う側の大小さまざまな建物の屋根の不規則な線が、まだ夕明りを湛えてる空をくっきりと切取ってるのが見え、その空には、奥深く晴れてる表面に、煙とも霧ともつか