Classiques japonais avec furigana
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ちゅうどく
聴雨・螢 織田作之助短篇集
織田 作之助
Lisez 聴雨・螢 織田作之助短篇集 (ちゅうどく) de 織田 作之助 (おださくのすけ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 18 162 caractères · 37 écrans
二
ばかりであった。
二
私の父は酒毒で死んだ。
彼は死ぬ一週間前まで、毎日一升の酒を飲んだ。
「おれの身の中には、何万円という酒がはいっている」
莫大な借金を残して死ぬいいわけに、彼はそう言っていた。
しかし、彼が借金を残したのは、酒を買う金のためではなかった。当時、一升の酒代ぐらい知れたものであった。灘の菊正で一升二円もしなかった。
彼が借金を残したのは、阿呆なぐらいお人善しで、ひとに欺されつづけていたそのためであった。しかし、私は父の口から、
「おれはお人善しだ」
という言葉をきいたことは一度もなかった。
他人の世話をするのが好きで、頼まれればいやといえぬ程気が弱く、おまけに欺かれてもそれと気がつかぬお人善しの性格のため、身を亡ぼしたのだとは、考えたくなかったらしい。
「おれは酒で身を亡ぼしたのだ」
と、虚勢を張っていた。
貧乏でも、何万円という酒がしみこんでいる身体のまま死ぬのが、せめてもの自慢らしかった。
借金を残して死ぬ死に方は、いさぎよいというものの、男としては情けない死に方であろう。が、世間の人は、酒が飲めるということを、しあわせの規準にしているのか、