Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

はなとりゅう

花と龍

火野 葦平

Lisez 花と龍 (はなとりゅう) de 火野 葦平 (ひのあしへい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 410 131 caractères · 824 écrans

Aozora Bunko

それどころか、この男らしい人とともに、自分も男を磨きたい、と、気負い立っていたほどだ。それなのに、今、悪漢が、玉井金五郎を殺しに来る土壇場に、立ちあったとき、

(もし、玉井金五郎がいなくなれば……?)

そういう悪魔のささやきが、時次郎の心の奥底で、まるで、このときを待っていたかのように、頭をもたげているのだった。

台所の方を、透かしてみると、もうもうと立ちのぼる白い煙の中で、柄杓を持ったマンが、眼を光らせて、表の気配に、気を配っている。

(マン坊は、金五郎のために、命を投げだして、闘かう気じゃな)

圧倒されるような威圧に、時次郎の心はすくむ。自分の醜い鬼の心と、エゴイズムとが、時次郎は、我ながら、恐しかった。恥かしかった。その癖、追っても、追っても、

――金五郎がいなくなれば、マンと夫婦になれる。

その美しい邪念は、心の一隅のどこかに、狡猾な鼠のように、潜んでいるのだった。

金五郎は、相かわらず、二本の日本刀を、大盤の水で、チャポン、チャポン、鳴らしながら、ときどき、表を見る。小手をかざし、姿勢を低めて、闇をうかがうような恰好をする。

家の内いっぱいに、はちきれそうにふくらんだ提灯の明かりが、表の道路までも照らしているが、外は、午前零時をすぎても、森閑として、人間の気配など、まるで、なかった。