Classiques japonais avec furigana
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あぢさい
花火・来訪者 他十一篇
永井 荷風
Lisez 花火・来訪者 他十一篇 (あぢさい) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 52 046 caractères · 104 écrans
惚れてやがるんだな。」
「あなた、もしかそうなら私はどこまでも隠してよ。惚て呼んだんなら私は、憚りさまですが、こんなに何も彼も打明けてしまやしない事よ。あなたに済まないと思うから私ゃ何も彼も隠し立てせずにお話したんだわ。ねえ、あなた。ほんとに私が悪かったんだから勘忍して頂戴よ。」
「これぎり屹度家へ上げちゃならないぞ。今度やって来やがったら水でも打かけてやれ。」
有耶無耶に一団落ついて慶三は従前通り妾宅へ通っていたが、また十日ほども経った或日のこと、午後に夕立が降りそこなったなり、風の沈んだ蒸暑い晩をば、慶三は宵から二階へしけこみ、十一時の時計を聞いてそろそろ帰仕度をしようという時、丁度便所へと下りて行ったお千代が突然大きな声で、
「どの面下げてのめのめと来られるんだろう、帰って下さいよ。」と怒鳴りつける。そして格子戸の音と共に表の方へ遠ざかって行く靴の音を聞いた。
慶三は褌一ツ、蹶起して下へ降りた。
「誰だ。彼奴か。」
「追ッ帰してやったわ。」とお千代は細帯もしめない寝衣の前を引合せながら、「ほんとに何てずうずうしいんだろう。あの通りだから実際困っちまうのよ。