Classiques japonais avec furigana
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えいゆうのうつわ
英雄の器
Lisez 英雄の器 (えいゆうのうつわ) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 610 caractères · 4 écrans
「しかしです。」呂馬通は一同の顔を見廻して、さも「しかし」らしく、眼ばたきを一つした。
「しかし、英雄の器じゃありません。その証拠は、やはり今日の戦ですな。烏江に追いつめられた時の楚の軍は、たった二十八騎です。雲霞のような味方の大軍に対して、戦った所が、仕方はありません。それに、烏江の亭長は、わざわざ迎えに出て、江東へ舟で渡そうと云ったそうですな。もし項羽に英雄の器があれば、垢を含んでも、烏江を渡るです。そうして捲土重来するです。面目なぞをかまっている場合じゃありません。」
「すると、英雄の器と云うのは、勘定に明いと云う事かね。」
この語につれて、一同の口からは、静な笑い声が上った。が、呂馬通は、存外ひるまない。彼は髯から手を放すと、やや反り身になって、鼻の高い、眼光の鋭い顔を時々ちらりと眺めながら、勢いよく手真似をして、しゃべり出した。
「いやそう云うつもりじゃないです。――項羽はですな。項羽は、今日戦の始まる前に、二十八人の部下の前で『項羽を亡すものは天だ。人力の不足ではない。その証拠には、これだけの軍勢で、必ず漢の軍を三度破って見せる』と云ったそうです。