Classiques japonais avec furigana
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きくづきよ
菊月夜
山本 周五郎
Lisez 菊月夜 (きくづきよ) de 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 16 129 caractères · 32 écrans
七
と罵ったのだ、彼は怒るよりもむしろ唖然とした、その面上へ信三郎は大喝をあびせたのである。
「上意だ、高力忠左衛門、下におろう」
七
不動の位置が砂のごとく崩壊する、忠左衛門はその音が聞えるように思った。権力とか威勢とかいうものはひとつの状態であって、本質の価値に因るよりも周囲のつくりあげる場合のほうが多い、高力忠左衛門がながいあいだ不動の権勢をにぎっていたのは、彼自身の実力というよりも、それが許されたる状態だったというべきであろう、その状態の頽れる時がきたのだ。信三郎の一喝は誤りなく的を射て、忠左衛門の確信の均衡をやぶった、――わが前に眼をあげ得る者なし、と信じていた頭上に、痛棒がうちおろされたのである。
老人は立って下座についた、信三郎は上座に直ると、かたちを正して歯切れよくずばずばと云った。
「……去る万治二年春、城中において、松谷権太夫こと斬奸の趣意をもってそのほうに対し刃傷に及びしところ、腹心の者どもを呼び催してこれを討ち果し、権太夫所持の斬奸状をひそかに破棄し、一存をもって老職評定を開き、お上の御沙汰をも待たず即決にて重科に極めたる始末、その身重職にありながら上をはばからず専断私曲の致しかた不届き至極に付き、追て沙汰あるまで謹慎を申付くるものなり」