Classiques japonais avec furigana
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きおくちがい
記憶ちがい
辰野 隆
Lisez 記憶ちがい (きおくちがい) de 辰野 隆 (たつのゆたか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 623 caractères · 4 écrans
覚えていないかな。俺たちが高等二年の時だった。その頃、尋常二年か三年に、飯田の雪ちゃんという可愛いお嬢ちゃんがいたのを忘れたかい?」
「覚えているとも、雨の日のことだろう。あれは忘れられないよ。」
「そうか、そいつは驚いたね。」
初夏の雨の日だった。休み時間に、運動場で遊べぬ少年少女たちは廊下を駆けまわったり、或はYやNのように、廊下の端に腰をかけて、両足をぶらんぶらんさせながら、灰色の空を物足らなそうに眺めたりしていた。Yがふと横を向くと、手を延ばせばとどく程の所に、色の白い円い顔の雪ちゃんが、片方の足を折って坐り、片方の足をぶらりと垂れて、これも余念なく、降る雨を眺めていた。
その季節に足袋をはいているのは雪ちゃん以外にはなかったので、それがYにもNにも何となく異様に思われたのだった。Yにはその場の光景が五十年後の今でも、まざまざと浮んで来るのだが、それから先の記憶が少し覚つかない。次の瞬間には、Yは雪ちゃんを後から、しっかり抱えていた。Nは雪ちゃんの小さな白足袋を手に持っていた。足袋を無理に脱がされた雪ちゃんの左の足の小指が二股に岐れて、桃色の爪が二つ列んでいた。