Classiques japonais avec furigana
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えつねん
越年
岡本 かの子
Lisez 越年 (えつねん) de 岡本 かの子 (おかもとかのこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 10 003 caractères · 21 écrans
いよいよ正月になって加奈江は明子の来訪を待っていた。三日の晩になっても明子は来なかった。加奈江は自分の事件だから本当は自分の方から誘いに出向くべきであったと始めて気づいて独りで苦笑した。今まで加奈江は明子と一緒に銀座の人ごみの中で堂島を掴まえるのには和服では足手まといだというので、いつも出勤時の灰色の洋服の上に紺の外套をお揃いで着て出たものだったが、流石に新年でもあり、まだ二三回しか訪れたことのない明子の家へ行くのだから、加奈江は入念にお化粧して、女学校卒業以来二年間、余り手も通さなかった裾模様の着物を着て金模様のある帯を胸高に締めた。着なれない和服の盛装と、一旦途切れて気がゆるんだ後の冒険の期待とに妙に興奮して息苦しかった。羅紗地のコートを着ると麻布の家を出た。外は一月にしては珍らしくほの暖かい晩であった。
青山の明子の家に着くと、明子も急いで和服の盛装に着替えて銀座行きのバスに乗った。
「わたし、正月早々からあんたを急き立てるのはどうかと思って差控えてたのよ。それに松の内は銀座は早仕舞いで酒飲みなんかあまり出掛けないと思ったもんだから」
明子は言い訳をした。