Classiques japonais avec furigana
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おちぼ
野菊の墓
伊藤 左千夫
Lisez 野菊の墓 (おちぼ) de 伊藤 左千夫 (いとうさちお) en japonais avec furigana. JLPT N3. Touchez un mot pour le sens.
N3 · intermédiaire · kanji et kana modernes · 25 621 caractères · 52 écrans
お宮の扉の上にある象鼻や獅子頭の彫刻、それから宮の中の透かし彫りの鳩やにわとりなども、昔手をふれたままなのがたまらなくなつかしい。
自分はようやく追懐の念にとらわれて、お宮の中を回りあるいた。したみの板や柱にさまざまな落書きがしてあるのを一々見て行く内に、自分の感覚は非常に緊張して細いのも墨の色のうすいのも一つも見のがすまいと、鋭敏に細心に見あるいた。それは三十年以前の記憶を明瞭に思い出して、確かに覚えのある落書きが二つも三つも発見されたからである。
いちじるしい時代の変化は村の児童の遊戯する場所も変わったと見え、境内の荒れてるもどうり、この宮の中などで遊ぶ子供も近年少ないらしく、新しい落書きはほとんどなかった。そうしてつくづくこの多くの古い落書きを見ていると、自分はたまらなく昔なつかしの思いがわきかえるのであった。
ありあり覚えのある落書きがさらに多く見いだされてくる。自分はなお三十年の間かつて思い出したことのなかった、一つのなつかしい詩のようなことがらの実跡を見いだした。さすがに若い血潮のいまだに胸に残ってるような気持ちで、その墨の色のうすい小さな文字の、かすかな落書きにひたいをつけるばかりに注視した。