Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
Lisez 鉄の処女 (てつのしょじょ) de 大倉 燁子 (おおくらてるこ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 706 caractères · 42 écrans
処が狂言ではなく、妻はそれを一と息に呑んでしまったんです。唇の処へ持って行く時、ちょっと恨をふくんだ眼をして、私を見ました。私はいきなりその手を押えようと思って、フと気がついたんです、四辺の食卓には多数の人がいるではありませんか、ボーイも背後に敬々しく立って見ています。そんな処で騒ぎ立てたら、それこそ私の身分も分り、早速新聞種です。そしていろいろの事をほじくり出されては堪りません。妻も生き耻を晒すことになります。体中に油汗をにじませながら、黙って凝と見守っていなければなりませんでした、私のような冷血な男でも、最愛の妻が目の前で毒を仰ぐのを見ながら、手を束ねていなければならないというのは、何という恐しい事でしょう。
私の体は凝結したように強張って、頬は痙攣して引きつってしまいました。こんな残酷な刑罰がありましょうか、後になって考えたことですが、賢い妻は尋常一様の事では、到底私の意志を翻えし得ぬと知り、反省を促す最後の手段として故意とこういう場所を撰んだのではないかと思います。
サロンへ戻ってからも妻は口をききませんでした。ホテルを出る頃はよほど苦しそうでしたので、円タクを拾い、横浜から邸まで附き添って、私が門内まで送り込んだのです。