Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 猿回し
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 猿回し (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 125 671 caractères · 252 écrans
「お前が此処へ来たことを、怨んでいる者は無かったのか」
「――」
もう一度お滝は首を振りました。
「そして、お前は、進んで此処へ来たのか」
「――」
お滝は激しく首を振りました。大きい眼がうるんで、可愛らしい唇が心持歪みます。
「お前は、母親のところへ帰り度いのだろう」
「親分――私は、私は」
お滝は初めて声を立てました。犇と自分の袂を噛みますが涙は頬を洗って、大きな前髪が、嵐のように揺れるのです。
「よしよし何んとかしてやろう――短気を起すな、よいか」
「親分さん」
平次は滑るように座を立って、静かに梯子段を降りました。二階にたった一人お滝を残して、夕陽はもう薄れかけて、幸い誰も見る者はありません。泣き度いだけ泣いたら、処女の心も鎮まることだろう――と言った、淋しい気持で。
「あ、御主人」
主人岩太郎は、二階の様子を案じたのか薄暗い梯子段の下に立って居りました。
「お滝が何んか申しましたか」
「いや、もう、何んにも言わない。若い者はあれだから困るが」
「へェ」
「ところで、御主人。岩三郎さんを殺した者は、容易には見当るまいよ――大方見当もついたことだろうが、あれは岩三郎さんを狙ったのでは無くて、兄のお前さんの命を狙ったのだ」