Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

もん

門

夏目 漱石

Lisez 門 (もん) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 139 830 caractères · 278 écrans

Aozora Bunko

三

宗助は暗い座敷の中で黙然と手焙へ手を翳していた。灰の上に出た火の塊まりだけが色づいて赤く見えた。その時裏の崖の上の家主の家の御嬢さんがピヤノを鳴らし出した。宗助は思い出したように立ち上がって、座敷の雨戸を引きに縁側へ出た。孟宗竹が薄黒く空の色を乱す上に、一つ二つの星が燦めいた。ピヤノの音は孟宗竹の後から響いた。

三

宗助と小六が手拭を下げて、風呂から帰って来た時は、座敷の真中に真四角な食卓を据えて、御米の手料理が手際よくその上に並べてあった。手焙の火も出がけよりは濃い色に燃えていた。洋灯も明るかった。

宗助が机の前の座蒲団を引き寄せて、その上に楽々と胡坐を掻いた時、手拭と石鹸を受取った御米は、

「好い御湯だった事?」と聞いた。宗助はただ一言、

「うん」と答えただけであったが、その様子は素気ないと云うよりも、むしろ湯上りで、精神が弛緩した気味に見えた。

「なかなか好い湯でした」と小六が御米の方を見て調子を合せた。

「しかしああ込んじゃ溜らないよ」と宗助が机の端へ肱を持たせながら、倦怠るそうに云った。宗助が風呂に行くのは、いつでも役所が退けて、家へ帰ってからの事だから、ちょうど人の立て込む夕食前の黄昏である。