Classiques japonais avec furigana
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ずいひつ しほんたいへいき
随筆 私本太平記
吉川 英治
Lisez 随筆 私本太平記 (ずいひつ しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 56 947 caractères · 114 écrans
そんな雀も、人間が愛の目で見ず、雀焼きにして食べたりするものだから、いつか人間に極度な警戒をもつようになったのだろう。しかし南北朝時代の人間は人間同士の殺戮に明け暮れしていて、まだ酒の肴に雀ヤキまでは思いついていなかった。おかげで、藪雀も、軒雀も、あの時分はまだ楽土を歌っていられたことであろう。そして自分たちも稀れには雀合戦をやるが、人間がもッぱら努力をかけている血みどろな戦場などは、いったい何のために何をやっているのかと、ふしぎそうに高みで見物していたに違いない。
過日の南北朝展でも、絵画から古鏡、蒔絵の図様にまで雀の図がよく見られた。往時の世間には、眼をやるところ雀がいたのであるまいか。それらの作品にも、人間が雀の持っている平和を羨望しているような趣がある。私たちもついさきごろの戦争の空襲下では、地にいる人間の座をかなしみ、梢雀たちを羨ましいとしみじみ眺めたことがある。
だが、私たちはすぐそれを忘れちまうのだ。雀は忘れない。いちど仲間が焼鳥にされた痛恨は忘れないから、たとえ私が中西さんの唇真似してチッチッと呼んでみても、私の窓へは寄ッて来ないのだろう。