Classiques japonais avec furigana
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ゆきさんだい
雪三題
中谷 宇吉郎
Lisez 雪三題 (ゆきさんだい) de 中谷 宇吉郎 (なかやうきちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 4 867 caractères · 10 écrans
三 雪解け
その間に私たちの祖国は、激しい無理な戦争をし、惨ましい敗戦の苦杯を嘗めた。しかし十勝岳の雪は、この祖国の嵐の中でも、冬ごとに、あの神秘的な姿を、誰にも見られないままに、現出しては消えて行ったことであろう。
実朝の歌集の中で、奥山の底深い沼の中に、落葉が静かに沈んでゆく、知る人もなく、という美しい歌を読んだことがある。十勝岳の雪の結晶を思い見るごとに、私はいつもこの実朝の歌を思い出すのである。
三 雪解け
北海道の春はおそい。
毎年二月の末頃になると、私はいつも北国のおそい春という言葉を思い出す。
東京の新聞には桜花のたよりがのり、芝生一面に暖かい日光がさしている写真が出ている。そういう新聞を手にしながら、窓外に目をやると、札幌の街はまだ一メートルの雪の下に眠っている。そしてその雪も煤煙にまみれて疲れた色をしている。
冬中のビタミン不足の影響がこの頃になると、そろそろ表面に現われて来るらしい。人々の顔色も艶を失って見える。まして終戦後の冬は、燃料や食糧の不足が、たださえ乏しい北国の人々の生活を、一層きびしいものにしている。
人々は春の来るのを待ちわびる。