Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
銀五郎のなきがらを埋めた土の上に、淋しい山の花が手向けられたのは、それから一刻ほど後のこと。
弦之丞は合掌して、しばらくの間瞑目した。万吉ですら、しきりに涙がさしてきてたまらない様子。
そこは峠の道を横に入った崖の中腹で、甲賀の山、河内平、晴れた日には紀淡の海も望まれよう、風に鳴る静かな古松と榛の木にかこまれている。
「じゃ弦之丞様、いよいよあなた様も御決心の通り、これからただちに江戸表へお立ちでございましょうか」
万吉はこう改まって、先ず一通り自分たちのいきさつから今日に至るまでの事情を話した後に、もし弦之丞がここから江戸へ向うならば、自分はお千絵様に会うことを一時思い止まって住吉村にある常木鴻山へ、事態の急変を知らせたいという気持を述べた。
すべてを聞きながら、思案をしていたが弦之丞。
「いや……」と向きなおって、
「その住吉村へは拙者がまいって、一度常木氏にもお目にかかっておこう。ところで、江戸のお千絵殿や銀五郎の身寄りのほうへも、早くこのことを知らせねばならぬが……」と、また、小首を傾げて考え沈む。
「む! 万吉」ハタと膝を打って、「江戸表へは、そちが一足先へまいってくれぬか」