Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
潮の色あい風都合も上々吉だ」
自己の幸運を祝福する言葉とも聞こえる。
彼には溢れる光明があった。
ニヤリと、いやな思い出し笑いを洩らして……また役目の水見八方へ小手をかざした。
ボウ――と川上から二番貝。
卍丸は徐々と川口へ向って辷りだしてくる。そして、やや取舵に一の洲の杭とすれすれに鏡の海へ泛かみかけた。啓之助の船は、脇備えの形をとって、その後から漕ぎ従う用意をする。これも渡海の際の常例である。
阿波守の乗っている卍丸――その舷に立てつらねた船印の差物には、桐のかげ紋と卍の紋、朝の潮風をうけてへんぽんとひるがえった。
槍の緋羅紗は太陽より赤く、燦として波に映ゆる黄金の金具は魚群も遠ざける威風がある。艫幕いッぱいに風をはらむかと思うと、やがて、颯! 颯! 颯! 二十四挺の櫓拍子が、音頭と共に快く波を切った――。
「有村殿! 有村殿!」
こう呼んだのは船上の阿波守である。
「はっ、御用で※(感嘆符疑問符、1-8-78)」と、胴の間梯子を駈け上がってきたのは元気な三位卿。海をのぞむと誰しもが自然と大きな声になる。
「お召しでございましたか」
「されば、あまりに好い眺め、一人でほしいままにするのは惜しいと存じてな」