Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans

Aozora Bunko

暗たんたる中に、ツウ――と赤い、一筋の光がみえた。まさに無明の底から碧落を仰いだような狂喜である。お綱は、われを忘れて闇を泳いだ。

そこへ駈け寄ってみると、いよいよ香ぐわしい匂いが強く感じられた。細い明りは、隅の太柱と羽目板との境の、わずかな隙間から洩れている。

丁子の薫るに似た香煙も、その隙から、忍びやかに流れてくるのだ。お綱は、この板壁の向うにいるのが、何者であろうと考えてみる余裕もなく、

「おっ、誰かいる!」

匕首の柄をみずおちに当てて、力いっぱい、板壁を突いてみた。だが、欅かなんぞの厚板とみえて、刃物の尖がツウ! と辷った。

「あ、これを折っては……」と、匕首の尖を透かしてみたが、折れていなかったのでホッとした。

偶然、この短い刃金を握って離さなかったのが、奈落をのがれるただ一つの活路である。お綱は、そう思って、鉄のような欅の羽目板に向い、こんどは、きわめて大事をとりながら、サクリ、サクリ……と仮面でも彫るようにえぐり始めた。

白い短刀の切ッ尖から、削らるる木屑が、シュッシュッと顔や胸へ散ってくる。かれは知らず知らず一心になれた。そして、一寸一寸と、彫りこまれてゆくのが、自分の最善な活き路であるように信じられてきた。