Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
孫兵衛は舌うちをして振りかえったが、その途端にハッとして、鋭い眼ざしで闇を探った。
「誰だ……誰だ、今斬られたのは?」
「一角だ、一角が深傷を負ってしまった」
周馬は色を失ったような声で、怪我人を抱き起こしながらお十夜の応援を求めた。
すると、その時になって、木立の裾をつつんだ藪だたみが、嵐のように、ザワザワと揺れだした。そして、その中から、四人、五人、三人と、得物を持ったあぶれ者が、張合いぬけのした顔で、怪我人のまわりへ寄り集まる。
「間抜けめ!」と、お十夜は、時機をはずしてノコノコと出てきた大勢の面へ、唾を吐きつけるように腹を立てた。
「なんで、俺が抜いた時に、すぐに対手を押ッ包んでしまわなかったのだ。見ろッ、弦之丞の奴はとうの昔に逃げ出してしまった。やい、半次はどうした、半次は?」
「へえ、ここにおりますが」
「なぜ、てめえは、みんなに合図をしなかったのだ。ざまを見やがれ! 対手は夕雲流の使い手だ、てめえがまごまごしている間に、この辺にはまだミッシリと人数が伏せてあると気取ったから、素早く影を隠してしまった」
「おい、孫兵衛、孫兵衛」
と、深傷を負った一角を抱えて、旅川周馬がよろよろと立ち上がった。