Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
灯のつく頃に、だいぶ苦痛に疲れた怪我人は、もう呻く力も失せたらしい。汐の落刻に向うのではないか。皮膚の色、吸う息のもよう、刻々と悪いほうへ変ってくる。
「どうしたのでしょう?」
「もう来そうなものだが……」
「会わせてやりたいものだ、間に合ってくれればいい。私たちはちっとも知らなかったが、お綱さんは虎さんの血を分けた娘じゃないのだそうだ……それだけにねえ」
低い声でささやいていると、また痛みが来たのか、怪我人は眉をしかめて、蝦のようにそりだした。と、その門口へ、一月寺へ使いに走った男が帰りついて、
「来ましたよ、一緒に……」と汗を拭いた。
「エ、来たかい?」と、みんな自分のことのようにホッとすると、静かな下駄の音がして、土間の中に、お綱と見馴れぬ男が立った。
「じゃ、そこで」
「エエ、私は、待っておりますから」と土間の隅ッこに腰かけたのは万吉で、不意な知らせと行きがかり上、ここへ一緒に来たのであった。
頭巾をぬいで上がると一緒に、
「あ、姉ちゃん……」
と、乙吉とお三輪が、蒲団の裾から飛びつくのを、側の者があわてて、
「しッ……いい子だからね」
と両の手へ抱き抑える。