Classiques japonais avec furigana
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さとう
麻布襍記 ――附・自選荷風百句
永井 荷風
Lisez 麻布襍記 ――附・自選荷風百句 (さとう) de 永井 荷風 (ながいかふう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 37 256 caractères · 77 écrans
毛虫の毛を逆立て芋虫の角を動し腹を蠢かすさまの恐しきを思えば、庭上寧ろ花なきに如かず。花なければ虫も亦無し。
毛虫芋虫は嫩葉を食むのみに非ず秋風を待って再び繁殖しいよいよ肥大となる。梔子木犀枳殻の葉を食うものは毛なくして角あり。その状悪鬼の金甲を戴けるが如し。雁来紅の葉を食むものは紅髯々として獅子頭の如し。山茶花を荒すものは軍勢の整列するが如く葉裏に密生し其毛風に従って吹散じ人を害す。園丁も亦恐れて近づかず。
およそ物として虫なきはなし。米穀に俵の虫あり糞尿に蛆あり獅子に身中の虫あり書に蠧あり国に賊あり世に新聞記者あり芸界に楽屋鳶ありお客に油虫あり妓に毛虱あり皆除きがたし。物美なれば其虫いよいよ醜く事利あれば此に伴うの害いよいよ大なり。聖代武を尚べば官に苛酷の吏を出し文を尚べば家に放蕩の児を生ず倶に免れがたし。芸者買の面白さは人を有頂天ならしめ下疳の痛さは丈夫を泣かしむ。女房の有難きや起きては家政を掌り寝ては生慾を整理す。徳用無類と雖も煩さくしつッこくボンヤリして気がきかず能く堪うべきに非ざるなり。児孫は老父を慰め団欒の楽しみをなすと雖障子はいつも穴だらけなり。