Classici giapponesi con furigana
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あすなろう
あすなろう
山本 周五郎
Leggi あすなろう di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 19.925 caratteri · 41 schermate
両手が、静かに草の上をすべって伸びた。――そのとき寺で、四つ(午後十時)の鐘を打ち始めた。鐘楼は本堂の向うにあるのだが、鐘の音はかなり高く、空地ぜんたいをふるわせるように聞えた。文次は手拭をまるめてふところへ入れ、傷口の血を止めると、着物の上から押えながら、静かに立ちあがった。
「こいつが、こんなことを」と彼は呟いた、「こんなことをしようとは、思わなかった、うまく嵌められた、しゃれた野郎だ」
そのとき寺の脇から、提灯の光が一つ、半分は袖で隠されて、こっちへ近よって来た。文次は頭を振り、眼をそばめて、それが提灯の火であり、その光に照らされて見えるのが、娘の顔だということを知ると、あっといって右手を前へ出した。
「いけねえ、おひろ」と彼は叫んだ、「こっちへ来ちゃあいけねえ、そのままうちへ帰るんだ」
娘はいちど立停ったが、すぐ足早にこっちへ来た。
「あんた、だれ」と娘が訊いた、「政さんじゃないわね」
「ここへ来ちゃあいけねえ、早く帰るんだ」
「あの人はどうしたんです、政さんは」娘はせきこんで訊いた、「あんた政さんと会ったんでしょ、どうしてあの人は来ないの、なにか間違いでもあった