Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
花野を東へ次第下り、岩や灌木を厚く封じる苔と羊歯、その根方へしみ込んではあふれ、あふれてはしみ込む、香り高い清水を掬んで、小暗い仙人谷の源頭を、雪渓へと下り立つ。白い固い雪の流れに乗って、白い柔かい霧の深みへと沈んでゆく。その深みには、何か不可思議なものがひそんでいる予覚がある。
雪の上には所々に、熊の糞を見かける。ある所では、岳雀(岩ひばり)のむくろが一つ落ちていた。取りあげて見ると、堅く眼を閉じて、足をちぢめ、羽毛はバラバラに荒れている。二、三日前の風雨のかたみかも知れぬ。厳酷な自然の相剋をしのばせる。私はそれを又そっと、雪の波の底深く蔵めた――冷たい、しかし山の好きな彼女には、最も落ちつける墓場ではないか。
左右から大小の雪渓が会合すると、間もなく霧はうすれて、そこに烟をはく山腹があらわれた。湯へ来たのだ。花崗岩が錆色に※爛して、大きな磊塊をなしたり、砂泥になったりする所を、乗り越えはいあがって、煙の源へ出る。青草葺きの、虫の巣めいた小屋が一つ見つかった。この頃来た人の遺物であろう。かまどを仕掛けた跡などもある。あたりは一面に花崗岩の荒れただれた傾斜で、ただ萱の類だけが所どころ、ほうほうと髪を乱したように生い茂っている。