Classici giapponesi con furigana
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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
Leggi ある偃松の独白 (あるはいまつのどくはく) di 中村 清太郎 (なかむらせいたろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 132.905 caratteri · 262 schermate
そこに何のさまたげるものもなく、ただちに鮮かな血の流れが認められる。それに日に向った側からは、からだも手拭も何もかもが、みな虹のような彩光を放つのだ。一切が明白にして、しかも一種、霊幽の気に満ちた思いがする。ただし光りと熱と湯気に酔って、目がくらみそうになるから、とても長くつかってはおられない。
昼間はそれに、虫が多い。大きな牛虻が来る、小形の虻も二、三種ある。うっかりしていると、所きらわず刺される。驚くほど痛い、キリッと急激にくる。しかし喰いつけばなかなか離れないから、たやすく叩き殺せる。もろくも仰のけに湯の中に落ちて、そのまま漂い流れてゆく……よく見れば、大きな黄緑色の複眼の燦として輝く、美しい虫だ。刺された痕は、しかし別だん腫れたり痛んだりすることはないようだ。
白昼はどうかすると、見る限り、さらに人影も無く、広い浴場はただ光りに満ちて、森閑としていることがある。その静けさをひとり味わっていると、そんな時に限って、よく天蛾の一種(昼行性の小形のほうじゃくの類)が入浴にやって来るのである。翅の強い彼女は、ツーッと勢いよく舞い降りてきて、胸から腹の方へかけて、滑らすように、湯の表面に打ちつける――そうした動作を、す早く幾回か反覆して、又どこともなく飛び去って行く。