Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

ja-reading.com

Leggi i classici giapponesi online con furigana. Filtra per livello JLPT, tocca una parola per il significato e traduci una frase.

おせん

おせん

邦枝 完二

Leggi おせん di 邦枝 完二 (くにえだかんじ) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 74.074 caratteri · 148 schermate

Aozora Bunko

……」

「お隠しなさいますな。それ、そのお顔に書いてある」

見物の一人が、近くにいる隠居の顔を指した時だった、誰かが突然頓狂な声を張り上げた。

「おせんが来た。あすこへおせんが帰って来た」

二

「なに、おせんだと」

「どこへどこへ」

飴売土平の道化た身振りに、われを忘れて見入っていた人達は、降って湧いたような「おせんが来た」という声を聞くと、一齊に首を東へ振り向けた。

「どこだの」

「あすこだ。あの松の木の下へ来る」

斜めにうねった道角に、二抱えもある大松の、その木の下をただ一人、次第に冴えた夕月の光を浴びながら、野中に咲いた一本の白菊のように、静かに歩みを運んで来るほのかな姿。それはまごう方ない見世から帰りのおせんであった。

「違えねえ。たしかにおせんだ」

「そら行け」

駆け出す途端に鼻緒が切れて、草履をさげたまま駆け出す小僧や、石に躓いてもんどり打って倒れる職人。さては近所の生臭坊主が、俗人そこのけに目尻をさげて追いすがるていたらく。所詮は男も女もなく、おせんに取っては迷惑千万に違いなかろうが、遠慮会釈はからりと棄てた厚かましさからつるんだ犬を見に行くよりも、一層勢い立って、どっとばかりに押し寄せた。