Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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おばなさわ

おばな沢

山本 周五郎

Leggi おばな沢 (おばなさわ) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.479 caratteri · 45 schermate

Aozora Bunko

――その日は早くから、節子は持仏堂のほうへいった。六畳二間に四畳半だけの、小さな住居が附いている、その濡縁に出て、念珠を手にして庭を眺めていた。

手紙で時刻を云ってやったので、供養の始まる半刻まえ、庭を横切って相良桂一郎がやって来た。彼は今日は髭の剃り跡の青い、「長方形」のきりっとした顔で、袂から念珠を出しながら、静かに丘を登ってこちらへ来た。

節子は胸の中を風の吹きとおるような、爽やかな気持で彼の眼を見あげた。

「――ようこそおいで下さいました、どうぞここからおあがり下さいませ」

「まだしかし、どなたも……」

「――相良さまお一人だけ、さきに来て頂きましたの」

節子はしんとした調子で云った。

「――わたくしお詫びを申さなければなりません。そうして、……あの位牌に代って、お礼も申上げなければなりませんの」

相良は眼を伏せた。しかし節子は明るい声で、心をこめてこう云った。

「――相良さま、兄からすっかり聞きました、戸田もわたくしも愚かでございました。どうぞおゆるし下さいまし、……なにもかも、有難うございました」