Classici giapponesi con furigana
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かげろうのにっき
かげろうの日記
堀 辰雄
Leggi かげろうの日記 (かげろうのにっき) di 堀 辰雄 (ほりたつお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 30.890 caratteri · 60 schermate
その八
――本当にこんな人並ならぬ気もちさえいたして居りますほどの私の心のうちは、誰やらの申しました『深山がくれの草』とばかり思えて、いくら繁くとも誰方もお認めなさいますまいと思って居ります」と書いて送った。
そう、本当に私はもう昔みたいにあの方のためになんぞ苦しむまいとは思わないが好いのだ。いくらあの方からお離れしようとも、もう自分がお離れできない事はよく私にも分かっている筈だろうから。まあ、こう云ったこの頃の私の切ない心もちと云ったら、あの根を絶たれて、もうすべての葉は枯れ出しながら、しかもまだそのか細い枝は以前のままに他の木の幹にからみついたままでいる、あの蔓草に似ているとでも言えようかしら。
その八
それからほどもない或夜の事、思いがけずあの方がひょっくりお見えになった。そうしてこの間の晩の事をしきりにお言いわけなすって、「今宵こそと思ったから、忌違えに皆が出かけると云うのを出して置いて、おれだけこちらへ急いでやって来た」などと仰ゃられていた。しかし私には、そう云うあの方のお心の中がすっかり見え透いてでもいるかのように、あんまり言いわけがましく仰ゃるのを反っておかしい位に思いながら、あの方をいかにも何気なさそうにおもてなしをしていた。