Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ばちあたり

ばちあたり

山本 周五郎

Leggi ばちあたり di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 22.391 caratteri · 44 schermate

Aozora Bunko

――いっそ母に訊いてみよう。

そう思ったことは幾たびもあった。けれども、こっちの気持にこだわりがあるのと、もしかして母の心を傷つけはしないかというおそれとで、ついに訊くだけの勇気は出ずにしまった。

――これはすべて自分の妄想だかもしれない。

これも繰り返し反省みたことだ。すると敏夫の不審な変化が思いうかんでくる。あの、鋏を借りに来た直後から、敏夫のようすはめだつほど変った。知ってしまえばそれまでよ、とうたいだしたのもそのすぐあとのことであった。死んでしまえばそれまでよ、ともうたった。あのノートを読んだな、という直感が、誤まってはいなかったと私は思い、触れてはならぬものに触れたような、あるいはなにか神聖を冒涜したような、するどい罪悪感のために頭を垂れたことを、私はいまでも忘れることができない。

――死んでしまえばなんて、そんないやな唄はうたわないでおくれ。

母がそう云って咎めたことがあった。すると敏夫は「そんなら予科練へでもはいろうか」と答えた。戦争が続いていれば、本当にそういうことになったかもしれない。母はそれを恐れたのだろう、夜間爆撃が始まるとまもなく、敏夫を伴れて郷里の町へ疎開した。