Classici giapponesi con furigana
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キチガイじごく
キチガイ地獄
夢野 久作
Leggi キチガイ地獄 (キチガイじごく) di 夢野 久作 (ゆめのきゅうさく) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 23.486 caratteri · 46 schermate
私はそれから後、四五日の間というもの、ドウしても遠くに出歩るく気がしなかったものです。むろん写真まで撮られていようなぞいう事は、夢にも気付きませんでしたので、ただ、私共の居る神秘境をダシヌケに掻き乱して行った巨鳥の姿を、思い出しては溜め息しいしい、家の周囲の畠ばかりをいじくっていたものですが、そのうちに又、眼の前に差迫っている冬籠りの用意の事を思出しますと、何がなしにジッとしては居られなくなりましたので、お天気のいいのを幸いに、手製のタマ網を引っ担いで、鱒をすくいに出かけました。
久美子はその時にも、不安そうな顔をして私を引止めましたが、矢張り虫が知らせたとでも申しましょうか。それを振り切って山を下りまして、紅山桜や、桂の叢林を分けながら、屏風を切り立ったような石狩本流の崖の上まで来ますと、生木の皮で作った丈夫な綱をブラ下げまして、下の石原に降り立って、岩の間の淀みに迷う鱒や小魚を、掬い上げ掬い上げしておりました。
すると……どうでしょう。まだホンの五六匹しか掬い上げていないと思ううちに、ツイ向うの川隈の岩壁の蔭から、中折帽を眉深に冠った洋装の青年が、畳みボートを引っぱりながら、ヒョックリと顔を突き出したではありませんか……。