Classici giapponesi con furigana
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キャラコさん
キャラコさん
久生 十蘭
Leggi キャラコさん di 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 28.043 caratteri · 56 schermate
剛子の一家は、父の光栄ある恩給だけでたいへんつつましく暮らしているが、剛子がキャラコの下着をきているのは、それには関係がなく、もっと深い感情のこもったことなのである。
二
槇子が、胸のうえに手を組みあわせ、グレース・ムーアのように気取りながら唄い終ると、
「おお、美事です!」
と、感にたえたような声をあげたのが、越智氏である。
越智男爵の三男で、このホテル中でだいいちの洒落者といわれるだけあって、さすがにすきのない身ごしらえだ。生地はウーステッドのストライプもの。ラベルをロング・ターンにし、よくこれで息ができると思われるくらい胴をしぼってあるので、うしろから見ると、蜂のような腰つきに見える。
三十を三つも越しているのに、なにをするでもなくのらくらとこんなところで日を送っている。もっとも、越智氏にとっては、これがだいじな仕事だともいえる。できるだけ社交界にしゃしゃり出て、金持の養子のくちにありつこうとしているのである。努力のかいあって、いままで二つ三つそういう口があったが、いつの間にかたち消えになってしまったのは、たぶん汚い腹を見抜かれたか、財産の点で折れ合いがつかなかったからであろう。